これは、1990年にリリースされたソロ名義での1作目のアルバムのタイトル曲であり、Ismoの代表曲です。 近代化の波の中、フィンランドの急激な変化を描写したこの曲は、もっともIsmoらしい曲の1つと言えます。 Ismoは、ありのままのフィンランドを冷静に見つめ、ときには批判的な視点も持ちながら、フィンランドという国をとても愛しているアーティストです。 そして、Ismoが描き出すフィンランドに、私たちは日本を重ねて考えることもできるでしょう。 Ismoがフィンランドの中に見出し、提起するものは、常に大切な、普遍的な何かをはらんでいます。 この曲は日本語に訳すのが非常に難しく、その解釈にあたっては、フィンランド在住の複数の友人の多大なご協力をいただきました。どうもありがとうございます。 よくわからない箇所もあるため、何かご指摘がございましたら、是非お知らせいただければと思います。 Kun Suomi putos puusta フィンランドが木から落ちたとき
フィンランドが木から落ちたとき、美しい夏の日曜だった 仰天した人間の子供が わら(注1)を 寄せ木細工の床へ替えた 汗まみれの頬骨から 鼻水がそこら中へ流れた コスケンコルヴァ(注2)が 信徒(注3)を極楽へ連れていく カレリア(注4)のやぶにらみが モニター端末を見た ウント・リトマネン(注5)が 悲しみに暮れて ボジョレーを1本買った サヴォ(注6)の若者が "アシッド・ハウスへ行き" (注7) 手始めに密造酒(注8)を食らった それからさらにもっと フィンランドが木から落ちたとき、すべてが急激に起こった 豚そのものも 麻袋さえも 見かけなくなった フィンランドが木から落ちたとき、牛乳は ミルク(注9)になった 氷上釣りの獲物は 冷凍食品に、夜は ブラックに(注10) フィンランドが木から落ちたとき、すべてがとても急激に起こった 沼地、鍬とユッシ(注11) マルティン・ルターとプラスチック袋 ドイツとスウェーデンとロシア(注12)が 一斉にため息をついた フィンランドが木から落ちたとき フィンランドが木から落ちたとき、時計は7時を示していた 8時に 骨折した足が(注13) 生活水準の競争へ 片足は牛小屋に、もう片足はテニスコートに 片手で牛の乳房を、もう片手でリモコンを 森の民の心、舌はより大きな口をかき回す スモークサウナ(注14)の暗闇の中で 情報技術者(注15)が幸せに浸る ヴェイヨ・ハマライネン(注16)が 中華ピザをひっくり返す コロンブスのハンザ同盟のご馳走(注17)の名のもとに 枯枝の束をねじ曲げる(注18) フィンランドが木から落ちたとき、すべてが急激に起こった 豚そのものも 麻袋さえも 見かけなくなった フィンランドが木から落ちたとき、牛乳は ミルクになった 氷上釣りの獲物は 冷凍食品に、夜は ブラックに フィンランドが木から落ちたとき、すべてがとても急激に起こった 沼地、鍬とユッシ マルティン・ルターとプラスチック袋 ラップランド(注19)とカイヌー(注20)とカレリアが 一斉にため息をついた フィンランドが木から落ちたとき 注1;フィンランドでは中世から、翌年の豊作を願ってクリスマスに床にわらを敷く習慣があった。 注2;フィンランドの代表的なウォッカ 注3;原詩では「körttikansa」(18世紀にフィンランドで始まったルター派教会の一派) 注4;フィンランド南東部のカレリア地方は、フィンランド人にとって精神的な故郷ともいわれる。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」は、カレリア各地に残っていた伝承や歌謡をもとにまとめられた。 注5;フィンランド人の男性名。 注6;フィンランド東部の伝統州。 注7;原詩では「"äsid haussiin män"」 「män」は「meni」(=「行く」の過去形)の方言。 注8;フィンランドでは1919年~1932年まで禁酒令が敷かれていた。 注9、注10;グローバリゼーションの象徴である外来語の浸透をさす。 注11;このフレーズは、Väinö Linnaによる小説「Täällä Pohjantähden alla」(=Under the North Star)からの引用。1880年代末から第2次世界大戦の終わりにかけてのあるフィンランド人一家を描いた3部作。 注12;フィンランドはかつてスウェーデンとロシアの支配下にあった。ドイツは第2次世界大戦中、ソ連に対してフィンランドを援助した。 注13;詩集「SANAT」では「kahdeksalta jalka polki tasoelinkisoihin」となっているが、正しくは「kahdeksalta jalka poikki tasoelinkisoihin」。 注14;煙突のない小屋で薪を燃やして、煙を充満させる伝統的なタイプのサウナ。 注15;原詩では「datanomi」(IT分野の専門資格を有する者) 注16;フィンランド人の男性名。 注17;ジャガイモをさすと思われる(??)。 注18;原詩では「vääntää risukimpun」。Ismoは「vitsa」(小枝)という語の代わりに「risukimppu」(枯枝の束)という語を用いたと語っている。フィンランドには「Nuorna vitsa väännettävä.」(=小枝は若いうちにねじ曲げよ。「鉄は熱いうちに打て」に類似の意。)ということわざがある。 注19;フィンランドの最北部で、伝統的にサーミ人が住んでいる地域。 注20;北部フィンランドに位置し、人が住んでいない森林の多い地域。
2 Comments
EIKO
27/7/2017 23:03:46
力作の翻訳をありがとう!
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Ismo Alanko来日公演実行委員会
28/7/2017 00:34:23
注釈まで読んでくれて、どうもありがとう!
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